ロックンロールに蟀谷を

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KAGERO 『KAGERO V』

 日本の暴力的ジャズカルテット KAGERO の5thアルバム、名前は予想を裏切らずに『KAGERO V』だが、内容は十分に期待を上回ってくれるものになっている。 

 

 とりあえず「THE TRICKSTERを聴いてもらうのが早い。

 


KAGERO / THE TRICKSTER - Official MV

 

 ドラムとは"叩く"楽器であるという原点回帰を思わせるドラムの物理攻撃に、ブリブリと歪ませた刃で音空間をぶった斬るジャズベ刀。

 高ゲインの不穏なコードで煽るピアノの上で、猟奇的なサックスが咆哮する。

 

 このクールなミュージックビデオは東京都23区全てを盛り込んで撮られたものらしい。

 曲自体、感覚的なことをいえば、実に「現代的」なTokyo, Japanを思わせる雰囲気を漂わせていると思う。

 賛美するわけでも懐古するわけでもなく、淡々と現代のアーバントーキョーを描画する感じ。

 ちなみにサックスのタータラタタ タラタタの部分は美空ひばり「お祭りマンボ」からの引用かなと勝手に思っている。

 それがまた「和」を連想させるんだけども、引用元のメロディをいやらしくずらすことで絶妙に現代的な感じになっててなぁもう。

 

 このTHE TRICKSTERを含め、アルバムの前半は遠慮なき破壊力の猛打。

 演奏のパワフルさは言うまでもないが、前作まで以上にミキシングも良くなってよりライブに近い音の圧力が感じられるようになったと思う。

 「Eraser」2:13、サックスが消えて他の楽器がドンと入ってくるところが圧巻。

 それと「NO WAY」の、長めのノートを繋いで淡々と吹くサックスの後ろで他の楽器が気張る感じも面白い。

 

 7曲目「Walk Alone」の出だしで前半からの雰囲気が一転。ここが大変良い。

パラパラと降る雨のようなピアノの裏で、不格好にドラムが跳ねる不思議なセッション。

 ここにサックスとベースが入ってきて絵がまとまっていく。

 がっつり盛り上がってからピタッと収束してまた序盤の静けさへ戻る進行も良いんだけど、唯一、盛り上がりからターラララララ ターラララララって階段状に降りてくるとこだけちょっと安っぽくて勿体ないと感じたかな。個人的には。

 しかしここを境に後半はムーディな楽曲が多くなり、アルバムを通して聴いてもよくまとまっているなぁと思う。

 

 KAGEROの楽曲は「キャッチー」なんて次元じゃない。

 一聴の瞬間から鼓膜を鷲掴みにされ、停止を押してもまるで離れてくれない主旋律の中毒性。

 今作でも、開きなおって持ち前の武器を研ぎ続けてきた感じが出ていてとても良いっすね。

 

 

KAGERO V

KAGERO V

 

 

 

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